■10/10 松田美緒&ジョアン・リラ
 松田美緒さんの新譜『Asas』発売記念ライブツアー、名古屋はここTOKUZOで行われました。歌姫・美緒さんは、鮮やかな色使いの衣装で登場。ノッてくると踊ったり、終始楽しそうで気持ち良く歌っておられました。そんな美緒さんをしっかり支えるのは、今回のツアーのために、はるばるブラジルからお迎えしたという、新譜の共同プロデューサーでもあるジョアン・リラさん。実はブラジル音楽界の重鎮だそうで、6弦のギターと10弦のヴィオラ・カイピーラを自在に操り、繊細なフレーズを生み出し、心地良いグルーヴを作り上げる演奏。そして時々入る歌も、ごく自然な感じ。サポートパーカッションの福和誠司さんは様々な打楽器を使って、そのグルーヴを共に膨らませていきます。さて、ライブは新譜を中心に、これまでの曲や世界各国の名曲、ジョアン・リラさんのオリジナル等をたっぷり。更に、ジョアン・リラさんが素晴らしいソロを披露。2回のアンコールを含め、満喫しました!(藤井由紀)


■10/14(日)大友良英 NEW JAZZ ORCHESTRA
 津上研太、アルフレッド・ハルトのサックス奏者2人が抜けた新生ONJO。見た目で一番変わったのはメンバーの配置。ドラムとベースが離れて、間にヴァイブラフォンがセッティングされている。ONJOはご存じの方もいるように演奏をモニターに頼らない。モニターを使っても少音量で補助的に使うくらいなので、ドラムとベースの間を離したことの意味は大きかった。そのため聴く中心点がいくつもしかも同時にあった様な感じ。はっきりしたリズムやソロがあるわけではないのに今まで聴いたことがないような不思議なグルーヴ感に溢れていた。しかしカヒミ・カリィの歌う曲のなんと美しいことか。どこにでも中心がある、だから自然とオーケストラ全ての音を聴いてしまう今のONJOでは、以前以上にヴォーカル曲がはまる様な気がするけどどうでしょう? 超満員の立ち見でもあったけどそんなに気にはならなかった。踊れる音楽じゃないから体はきついかもしれないけど、逆に椅子席で変にリラックスして聴くよりよかったと思うけどこれもどうでしょう?(石橋正二郎)


■10/19(金)Keller Williams
 初めて見ました!ケラーウィリアムス。以前から気にしていたので非常に楽しみだったこの日。ステージ上には、“これ1人でやるんかいっ!”という数の楽器がズラリ。テルミン、ベース、アコースティックギター、エレドラ、ループマシンのラックの上には口琴まで。ボイスパーカッション、口でトランペット、ディジュリドゥの音まで出してしまう。口あんぐりです。身体も楽器です。ボーカルもする。うまい。インストから歌ものまで カントリー、ファンク、ジャズ、レゲエ、すべて1人でやってのける。お客さんを巻き込む1人ジャムセッションは全然1人ではないのでした。踊り出したくなる曲から、アコースティックでギターを聴かせる曲まで、様々。まさにライブ!というスタイル。この手のミュージシャンのライブは幾つかみたことあるが、見た目に飽きてしまうのです。しかし彼はギターのネックに口を付けフルートを吹く真似をしながらギターシンセからフルートの音を出してみたり、常にユーモアたっぷりオーバーアクション。終始見ていても楽しく、踊りながらみるお客さんからは笑い声が時折聞こえた。時間一杯たっぷり見せてくれました。ケラーウィリアムスの人柄と豊かな表現力が伝わるライブだったな。また得三に今池ごと巻き込んでジャムセッションしに来てほしいなー(岡直人)


■10/25(木)田中倫明・Mini Romantica
[梶原順(g)橋本歩(cello)田中倫明(per)]

 音数は少なく、骨太で硬派なロマンチシズム。大げさに言えば、人生の重荷を力強く両肩にしょいこんだような二人の男性軍の音楽に、紅一点、橋本嬢の、暖かいチェロの音色がすべりこんでくる。パーカッショニスト田中倫明さんの音楽は、いつもその背景にあるものの深部へと向かって放たれる。今回のツアーのきっかけとなった新譜「Pablo X」。画家パブロ・ピカソ、チェロ奏者パブロ・カザルス、詩人パブロ・ネルーダという、スペイン内戦にかかわった3人のパブロを題材にした、五木寛之の「戒厳令の夜」という小説の記憶がこのアルバムを作らせたという。僕は、「戒厳令の夜」を高校の時に読んだが、情けないかなほとんど憶えていない。倫明さんは、そこから、自由と平和をみずからの作品で表現した3人のパブロを感じ、さらには岡本太郎、ロルカ、ピアソラ、ヘミングウェイといった人たちに思いを馳せる。今回の演奏も、新譜からの曲が中心となっていた。一曲一曲、本人によって丹念に解説された後に演奏される楽曲を聴いた夜は、なにやら後を引くのである。人間という、ほとんどが大きな矛盾で出来ている生き物の価値。飽く事無く続けられる、そのいとなみの真実。そんな、考えてもしょうがないような事を、断片的に思ったりするのである。倫明さんのRomanticaは、たとえ編成はミニであろうと、いつも広く深い。(森田)


■10/27(土)カルメン・マキ 板橋文夫
 「私自身のことではないが、それは私の様々なものから浮んだイメージであったり・・・。好きな歌を歌います。」男が男に送った愛の歌、特に印象深かったのが、薬で死んだミュージシャンと後を追って自ら死を選んだ女流作家の愛の歌。世間では生き急いだ二人の破滅的な愛とも言われたが、美しい季節をともに生き抜いた幸せな2人だったのではとマキさん。題材になったと思われる小説・エンドレスワルツ。格好いいのかなくらいの気持ちで読んでしまったことを後悔した。こんなにも曝け出して真っ直ぐに他人を愛することができるとは。今もよく分からないままだが、実にソフトで美しい歌だった。
時には、破壊的に両手両足、まるで内臓までもが飛び出しているように激しく鍵盤を叩き、そして心のずっと奥に染み込んでくるようなどこか懐かしささえ憶える繊細な板橋さんのピアノと一曲づつを実に丁寧に歌うマキさんが本当に好きな歌の数々。回を重ねるごとに常に進化をし続けているというのは当然だ。両者の絶対的な存在感から放たれる一瞬ごとに息を呑み、胸の奥が苦しくなった。が、全てを受け止めたいと素直に思った。照明卓でフェーダーを触る指には汗、確かに震えた。そして、帰り際には、「またね!サラバ!」とマキさん。数分後、ふと力が抜けた。シビレた。(ハヤシイズミ)