■11/4(木)藤井郷子カルテット
 18時15分頃だったろうか。階段を昇りドアを開けるとそこで「すみません、まだなんです」との一声。よく見るとステージ上では、まだメンバーが打ち合わせしているではないか。仕方無くドアを締め階段を降りかけると音が鳴り始めた。知らない曲である。思わず足を止めてドア越しに聴き入ってしまう。その曲も、そろそろ終わりかな。と思われたその時、突然曲が中断。「ごめん、間違えた」と田村さんの声。「ここのところどうする?」と藤井さんの問い掛けにメンバーが話し合いしているようだが、内容が掴めたのはここまで。実際にはこの曲。アンコール前、最後に演奏されたのだが、この日は他にも新曲が多かったのである。ツアーの後にレコーディングを控えているとステージで話していたが、この際だから正直に言ってしまうと、初めて演奏する曲もあったようで「まだ慣れてません」と顔に書いてあるみたいだった。だがそれは落胆したと言うのではない。演奏の質とは別の話であり、演奏結果が毎度同じであるのならば、わざわざライブにやってくる意味は無いのである。今回は録音前の練習を覗いてしまったような感覚が新鮮であったし、CDに収録されてるかもしれない新曲の、未定だったタイトルの行方とか、楽しみの余韻はまだまだ尽きない。(下畑 悟)
■11/9(火)ハシケン
 先月ここTOKUZOで、息を呑むほどの緊張感が会場を包むなか、心深〜く染みいる歌声で私を魅了してくれたハシケンが、バンドスタイルでやってくるとあって、普段なら開演ギリギリがおきまりなのに、会場に一番乗りしてしまった。すでに期待は最高潮。まずは私も今回はじめて観る「木実の森」さんのライブから。手こぎオルガン・ハルモニウムを奏でながら、ピュアな想いがたくさん詰まった言葉をメロディにのせて歌い上げていく。まるで心が解きほぐされていくようなあたたかさが広がるバンドでした。そしていよいよハシケン登場。低く、そして厚く響き渡るベース音、小気味よいホーンセクションなど、バンドスタイルならではのハシケンサウンドに、会場全体がアッという間にエネルギーで満たされていく。中盤からの怒濤タイムに突入すると、もう踊らずにはいられない。たのしまにゃ損、おどらなきゃ損。そう思ったのは、私だけじゃなかった。連鎖反応のように会場全体に広がっていき、ステージと客席が一体となっていく。気持ちいい〜。この日はじめてハシケンを観た友人も「たまらんー」と、のたもうておりました。そうなんです。ハシケンのよさは、やはりライブを味わってこそわかるもの。まだハシケン未体験だというそこのアナタ。次回はぜひぜひお見逃しなく!!(Izumi Ozeki)
■11/18(木)ジャネット・クライン&パーラーボーイズ

 僕には、忘れることの出来ない3人のジャネットがいる。1人は、ジャネットリン。言わずと知れた札幌冬季五輪の銀盤の妖精だ。2人目は、ジャネット八田。元女優でプロ野球の田淵幸一氏の奥様である。いまさらながらすごい書き出しだが、僕は現在34歳の若人であるので、念のため。そして3人目にジャネットクライン。そのジャネットがパーラーボーイズと一緒に来日するとのこと。期待をつれて街に出る。舞台に現れるやいなや、そのキュートな魔法使いは、僕を古い地下室の酒場へいざなった。時に、静かな雨音を感じさせ、小粋にスイングする姿の裏には、どこか影があるようにも見える。小悪魔のような、確信犯的な彼女の振る舞いに僕はしばしうつつを楽しんだ。チンザノロッソがモノクロームに変わり、天井近くの招き猫が踊り始めた頃、オープニングを務めたミルキーバナナの2人が「面白かったね」と話す声で目が覚める。皆笑顔である。レジでは、樋口一葉も笑い出す。「坊主、楽しかったかい?」階段でブルースマンが呼び止める。僕は大きくうなずき、店を出た。古典が出来ない人には、いい創作落語は作れない。出し巻きが巻けない人には、いい創作料理は作れない。ネタ探しに奔走し、いいとこだけをつぎはぎしているアーティストきどりの人たちにぜひ見て欲しいライブだと思う。(あさいするめ)
■11/26(金)ふちがみとふなと/上野茂都

 会場全体がまったりと幸せな空気につつまれている。“鍋物的空間”とでも申しましょうか。ベースの音一つであんなにあたたかく、丸みのあるきれいな空間が創りだせるなんてと、船戸さんの音を聴く度に思う。そこに渕上さんの切なく澄んだ声が重なる。時に、はしゃぎながら子供っぽくかすれた声にぞくぞくしてとても心地良い。二人の創り出す音には美しい色がある。そこに三味線の上野さんである。昨今ちょいとブームのきている津軽三味線だとか、そんなストイックなものではなくて、日本舞踊 や芸者さんを彷彿とさせる、むしろ優雅ささえ感じられる音階にのせる“日常生活のわびさび”のなんとも言えない味わい深い唄々が飛び出す。上野さんの詩はどこまでも身近なテーマで、日本人であれば誰だって“ああ納得”である。上野さんの創り出す音にはいいにおいがある。しかしこの3人、音だけとってみれば一見合わなさそうなのに、ぐいぐい引き込まれていってハマってしまうから不思議である。これだから生の音楽ってやつはニクイ!今回の和をイメージした素敵なライヴフライヤーをきっかけに、得三女子スタッフ全員着物で参加のHOTな一夜となった。着物初体験の私にとって、こちらも貴重な体験でありました。上野さん、また是非ライヴしに来て下さいね!(得三スタッフ あちゃこ)
■11/27(土)28(日)大城美佐子

 昨年彼女を初めて得三に呼んだ時はスタッフだった。でも今回は得三が直接呼んでくれたので、最前列で思いっきり彼女の唄を堪能しようと意気込んでいた。所用で2日目のみ参加。仕事を終え6時半ごろ到着。既に前方の席はいっぱいだ。結局座ったのは一番後ろの席。でも、ほろ酔い気分で大好きなミュージシャンの登場を待つというのはなんと幸せなことか。いざライブ!いつもの様に殆どのMCを相方に任せ淡々と歌い続ける。が、その一曲一曲が心にズシッと響く。すると突然、『移民小唄』を歌いながら涙ぐむ美佐子さん。ハッとした。自身の生い立ちや今迄の道のりをふと思い出したのか・・。いや、私は勝手に想像する。長年相方を努めてきた故嘉手苅林昌さんを想ってのことだろうと。もはや伝説となってしまった二人の掛け合いは『絶品』だった。彼が亡くなった後しばらくは歌えなかったと聞く。そのことを想い私も涙。そしてアンコールで「私のことです。母子家庭の唄です。」とボソッと言って歌いだした『親の心』。胸にグッとくる。1日目はあまり声が出てなかったそうだ。小学1年の時から三線を弾き始め、現在68歳である。生きてる限り歌い続けて欲しいと切に願う。大好きな人の唄を、大好きな場所で聴けるとはなんと素敵なことか!来年もまた来て下さい。そして長生きして下さい。(酒井弘美)