REVIEW 12月号
 

●10/10(火)さかな

初めてさかなのライブを観るためにTOKUZOへ行った。さかなのことを知ったのは、2年程前、「リトルスワロウ」の頃。繊細で独特な音世界にやられてから、ずっとライブを観たいと思っていた。ポコペンさんは、なんか素朴な感じの可愛い人で、MCも淡々としていて、でも歌い出すとガラッと雰囲気が変わってしまう。この、深い悲しみと喜びを同時に讃えたような、それでいて、不思議な安らぎに満ち溢れた歌声と、それを包み込むバンドのアンサンブルはまさにワン・アンド・オンリー。もうあとはさかなの世界にひたりきり、溺れ聞くのみ・・・なんか夢見心地になって、ぐにゃぐにゃになっているうちに、あっという間に終わってしまった。ポコペンさんの弾くギターは、ベースアンプにもつながっていて、ベースの役割もしているのが印象的でした。音にこだわりあるんだろうなぁ。さかなって、なんか僕たちの間では音響派みたいにいわれることもあって、でもライブをみたら全然違った。すごくシンプルなことをしているだけなのにこの広がり・・・。残響系のエフェクトとかではなく、音と音との配置そのものが空間を作ることを改めて思い知らされました。しかし、さかなにとっての「唄心」とは・・・いったい・・・(CHILD BEAM 浅野裕介)

 

●10/24(火)32JANVIER

リヨンから来日した「1月32日」。何て素敵なバンド名なのだろう。そして、これ程迄に感動を与えてくれたライブを、生涯に何度経験する事が出来るのだろうか・・・。今までにもフランスのバンドを見る機会は何度か有ったが、癖の有る音を出すバンドが多い為か、その度に何かもやもやとする物が残って不満を感じていたのだが、32 JANVIERのライブはその全てを一蹴した。この夜、又一つ、伝説が生まれたと言っても良いのではないだろうか。4人のメンバーがVの字に並び、『ミナサン、コンバンハ、1ガツ32ニチデス』というアナウンスの後に披露されたのは、想像を絶するクオリティーを有した演奏で、次々と様々な音を左右のPAに放出するサンプラー、手品の道具や玩具も使用したドラム。、決してフリーキーになる事無くアドリブを繰り出して来るサックス、そして変幻自在の女性ヴォイスと、演奏からは片時も目(耳)を離す事が出来ないあっという間の1時間だった。会場に赴き、そのライブを観る事に拠って、彼らの芸術が完成されるという数少ないライブだったとも言えるだろう。この素晴らしい演奏を見逃した方の為にも、再来日を切望する。(クマザワ)
*当日の模様の詳細は→http://www.kuma.cc/

●10/12(木)キャスパー・トランバーグ

10月12日(木)朝から私は、スティーブ・レイシーが来る「ラブリー」へ行こうか、キャスパートランバーグのTOKUZOへ行こうか迷っていました。決められないまま仕事を終えて電車に乗り、その足はTOKUZOへと向かっていました。一部終了後に到着し、古田氏、鬼頭氏と入れ違いになり、「オイオイ、君達はあっちへ行ってしまうのかい、裏切り者め!」と思いつつ見送った。疲れた体をビールで癒し、一日の反省をしていると(本当かよ?)ライブが始まりました。南博の繊細なピアノが空間を覆いつくす。そしてうねうねとした水谷浩章のベースが心地よく、外山明のドラムスが全体を押し上げてくる。今日のライブはなかなかいいぞと期待感が募ってきたところへ、キャスパー・トランバーグのトランペットが炸裂するのかと思いきや、ソフトな音色。「あ〜落ち着く」音が内蔵までたどり着き、アルコールとブレンドされ幸せ感一杯で、「私はTOKUZOに来て本当によかった」と森田氏へ一言。そして長い夜はまだまだ続くのでありました・・・(オーイ!もう帰れよ〜)
P.S. 水谷さん南さん、また飲もうね! (惣野)

●10/31(火)John Fahey

ほとんど予備知識なしで出かけた。CDも何も聞いたことなし。分かってたのは年寄りのギター弾きでジム・オルークがリスペクとしている伝説の人物らしいことくらいだ。まずエレキギター片手に登場してきて驚いた。ピンクのTシャツに赤い単パンといういでたちで、もっと渋い爺さんを想像していたら頭頂部がツルッと禿げててデブだった。ぶつくさ独り言のように何か呟きながら一曲目に入る。フォークとかブルースみたいな感じでポロポロ弦をはじく。こりゃまずい。素人の暇つぶしみたいなもの聞かされちゃたまらん。音はエフェクター使ってないのか思いっきりストレートだし。と思っていたら二曲目に。そしたらどこかで私のスイッチが入ってしまいました。曲ごとにいろいろな風景が頭に浮かびだした。ミシシッピの三角州で掘建て小屋に暮らす奴隷の黒人、ゴールドラッシュでカリフォルニアに殺到する一獲千金狙い、アパラチアの農園でフィドルを弾く農家のおやじ、ブルックリンで縄張りを巡る抗争に明け暮れるBボーイたち。音数は少なくてもアメリカの歴史がしっかり染み込んだその音楽はとてもとても広く深かった。帰り際ステージに腰掛けてるジョン・フェイヒーに「とても良かった」と声を掛けたら、相変わらずぶつぶつ呟きながらもサンキューと言って手を差し伸べて来た。伝説としっかり握手した。(カノーヴァン新見)

●10/13(金) 羅針盤

羅針盤、3度目の来名はサード・アルバムレコ発(といっても発売から随分経っているところがなんとも)でなんとワンマン、それも二部構成、二時間半弱にもおよぶ長丁場。これで解散するのか、とでもいうような集大成的内容のライブでした。このレコ発ツアーからドラマーが代わり、まるで別のバンドのようにも聞こえます。ストレートで前向きな羅針盤。聴き慣れないせいかちょっと不思議ではありました。羅針盤はウタモノとかサイケではなくて、テクノとか音響系の方向から評価されたいそうです。本人が意図していることからは外れてそうですが、私は羅針盤をウタモノバンドとしては聴いてないんじゃなかろうか、と思います。結局感動させられるのはウタではなくてギターな訳で。ウタが不必要というのではありません、単に音がするものの一つというのであって、歌詞があるから直接的というのとは違う。それよりもギターのほうがすごく雄弁でどこか奥の方に訴えかけるものがあると思うのです。山本精一によると、名古屋は独特、なのだそう。嫌な想い出でもあるのでしょうか。前2回のライブは何だか客に対して威嚇しているようなところがあって、それもまた楽しかったのですが、今回は随分和やかな雰囲気でした。次回は客からガンを飛ばしてみる、というのはどうでしょう?
(sae kato)